東北旅行記 120090810

旅行中に部屋から何かを盗まれるより、部屋の鍵を落とすことのほうが怖いから、鍵をかけずに出発した。朝早くに出ようと思っていたのに豪雨と雷と眠気に阻まれ、昼過ぎにようやくアパートを出る。電車とバスを乗りついで東北自動車道の蓮田SAに着いたのは午後三時半だった。従業員用の出入口を通って一般道から高速道路に入ることは容易いし、べつに違法でもないけれど、不思議だなあと思う。七十リットルの大きなバックパックを背負っている旅行者など、普通は高速道路上で見かけることはない。俺はどこから来たんだろうか。
数日前に髪は短く切り揃えていたし、前日にユニクロで買ったばかりの真新しい安物のシャツも着ている。天気はいつ崩れてもおかしくないが当分は大丈夫そうだ。サービスエリアの出口に近い、休憩所から見えやすい場所に立つと、思いきって左手を挙げた。付近で休んでいた人々の視線を一気に集める。誇らしいような照れくさいような感覚が懐かしい。手を挙げているだけの俺が恥ずかしいのだから、俺に声をかけようという人はどれだけの勇気が要るだろう。こちらを見て微笑んだり、見て見ぬふりの人々が通り過ぎていくなか、背後から声をかけられる。宇都宮まででよければ乗っていきなよ。
東京でのゴルフが雨で中止となり宇都宮の自宅へ帰る人、東京に暮らしているが郡山の実家へ帰る人、東京に帰省していたが盛岡の自宅へ帰る人、誰もがどこかへ帰ろうとしているのに、行先も決めていない俺はどこへ向かってんだろうねと考えていた。周囲の人間には下北半島とだけ伝えてきたけれど、本当はそれすら曖昧だった。これまでにないテンションの低さで始めたはいいが、五泊六日の旅行、無事に終われるだろうか。
福島県の安積PAに着いたころには薄暗くなっていて、次の車で最後になるか、切りあげて野宿しようかと迷いながら手を挙げる。休憩所のほうからスケッチブックを抱えた男どもが飛び跳ねながら走ってきて、ああ、君たちもか、暇だねえと思う。日本一周している大学生二十歳、大阪から北海道に向かう会社員三十九歳、彼らと合流して三人で手を挙げる。大きなワンボックス車に乗り込み、暗闇のなかを北へ向かう。
彼らは今回が初めてのヒッチハイクだといった。長いときは七時間も待ったというのだけど、それは場所がよくないからだ。運転手の視点からヒッチハイカーを見つけやすく、なおかつ車を停めやすい場所に立てば、平均して十五分くらいで俺は乗せてもらえる。勿論、初心者のときは全く駄目だったから、彼らもそのうち自分で考えるだろう。だから上手い方法などは教えない。
山間部のサービスエリアで降りたのは午後十時を過ぎていた。関西に甚大な被害をもたらした台風が北上しているといい、面白いから野宿しようぜということになった。俺が担いできたテントは三人用と書かれているが、実際に三人で使うとなれば狭苦しい。でも、大の男が三人も入っていれば、台風に飛ばされることはないだろう。出発前に、雇用保険の手続きがあって職安へ行ったのだが、そこで流れていたオルゴールは、上々颱風『愛よりも青い海』だった。台風が過ぎ去ったら海へ行きたいと思った。
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す、すごいことしてますね
2009/08/17 23時39分 いしかわわたしはやっとバイトが決まって給料をもらったら自転車を買ってしまいました
どうも、すごいことになっていました
2009/08/20 23時32分 川野 URLバイトは美術館でやりたいと言ってましたっけ
何にしても自転車を買えてよかったです