湯20081031

「落ち葉が降り積もる季節には憧れがありますね、踏みしめて歩いたり」
「なんか、こう、我が青春に悔いありって感じだねえ」
昨夜、銭湯の脱衣所で、こんな会話を聞いた。二人の中年男性が、好きな季節について話しているようだった。本当は冬が好きだけれど、寒いから、やっぱり秋がいいねえと頷きあっている。落ち葉を踏んで歩くことが、どうして我が青春に悔いありなんだろうか、と疑問に思ったけれど、訊ねることはできなかった。いつか同じ年齢になれば理解できるかもしれない。彼らに話しかけて、話に加わることもできるだろうか。
百五十円の発泡酒を買うと、必ず小さな柿ピーの袋が付いてくる。今日はお豆あるからねと言って渡される。有り難うございますと言って受け取る。番台のおばちゃんと遣り取りする十数秒のあいだに、多少は意識の交流があって、それが一年半くらい続いていれば、顔を見合わせただけで笑顔がこぼれるようにはなった。話していることはいつも同じなのに、少しづつ何かが変わってきている。
最近は少し肌寒くなって、発泡酒を飲みたいとも思わないけれど、番台のおばちゃんと話すために未だ買っていたりする。湯冷めしないうちに自転車で走って帰り、蒲団にくるまって飲んでいる。喉元を通り過ぎてしばらく経てば、アルコールだから、やがて熱に変わる。いずれにしても銭湯には「熱」を貰いに行っているな、と上手いことを考えたつもりになって眠る。
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