世界一周この記事を はてなブックマーク に追加この記事を はてなブックマーク に追加

友人

 shuutakこと周藤卓也が一晩だけ埼玉のアパートに泊まっていった。山小屋での二ヶ月近いアルバイトを終えてから、あちこちで慌ただしく人と会っている。現在は一時帰国中だが、そう遠くないうちに再び中国から走り始め、ユーラシア大陸の横断に挑むらしい。

 自転車世界一周の「世界」って何、と訊ねたときに、周藤君から返ってくる言葉は「百ヶ国、十万キロ」という数字でしかなく、あまりに漠然としているようでもあり、これ以上に明瞭な答えはないようにも思える。俺より一つ年上、二十五歳の周藤君が、一つの区切りとして三十歳までには走り終えたいという。多分、これから五年間で積み上げたものを、三十代になってから少しづつ解釈していくんだろうな、今は深く考え込んでしまえば動けなくなるから、走り続けていたほうがいい。発泡酒を三缶も空けて、俺は、酩酊した頭でそんなことを考えていた。

 就職もしないで何をやってんだろう、と世間からは奇異の目を向けられるかもしれないが、職に就いたからといって軌道に乗れる訳でもない。移動手段に自転車を選んでいる時点で、そもそも軌道には乗ることができない。だけど自分の脚で何年間も移動し続けながら世界を見てきた人間が、何も得られないはずがない。こういうことを面と向かっては言えないから日記に書いてんだけど、あのー、あなたはとんでもなく凄い人間だ。俺より何倍も大きく見える。

 昨日は二年と九ヶ月振りに会った。次に会うのは三年か五年後あたりだろうか。日東キャンピー(脆いことで有名な自転車用キャリア)は壊れたって溶接して直せるけれど、体はそういうわけにもいかないから、死なない程度には気をつけて旅行を続けてください。

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