20070104
今日までの五日間でちょうど百件に桶寿司を届け、五百キロ走り、お客さんから八百円の御年玉と缶珈琲二つに缶烏龍茶一つを受け取った。店に戻り、ストーブに鍋をかけて湯を沸かし、温めた缶珈琲を飲んだ。冬になって市内を流れる川のほとんどが澄み透っていることに感嘆し、配達中に橋の上から光り輝く川をみていた。川のほかには、猫とか月とか夢とかいろいろみていた。眠いときには小人さんがおーとばいの運転をしてくれて助かったのだが、計算が苦手な小人さんは間違えて釣銭を八百円多く渡してしまい、もらった御年玉は差引ゼロとなった。今年、多くの災厄と幸運とに恵まれ、差引ゼロの一年となることを願った。
明日からようやく正月が始まる。眼鏡を外して正午頃まで眠っていたい。ほとんどの大人は今日が仕事始めであったが子どもらは未だ河川敷で凧揚げをしており、七日までは俺も正月休みを過ごしてよいはずだ。いまさっきウィキペディアで「眼鏡」の項をみていたら金正日の写真が載ってた。
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20070105
右前方から飛び出した原付が乗用車と衝突し、人が宙に舞い上がるのをみた。乗用車の後方を走っていた自分はすぐに停車して駆けつけ、車線を塞いでいた原付を歩道まで引き摺り、ヘルメットと眼鏡を回収した。原付は滅茶苦茶に壊れたものの、少年が負ったのは打撲傷だけであったらしく、乗用車の女性と二人の子どもに怪我は無かった。偶然は重なり、事故から二分後に警察の車両が通りがかった。事故であることを告げ、簡単に事情を話して俺はその場を離れた。今日の午前十時頃のことだ。
昨夏、北海道では目の前でトラックから後輪が脱落して歩道を数十メートル転がり、交差点のライトバンに衝突した。秋にはやはり目の前で自転車のおばあさんがトラックに当て逃げされている。できればもう事故を目撃したくはないが、幸いにも未だ死亡事故には遭遇していない。これからも自分が居合わせることは度々あるだろう。最大限の関わりを持てるように心がけておきたい。検索をかけたら日本赤十字社が救急法の講習をしている。春休みに受けに行こうと思う。
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20070106
調布の甲州街道で対向車線のセダンが俺とすれちがった直後、ガードレールに突っ込んだ。昨日の日記を書いた十時間後のことで、確率的にありえないことだと思いながらも駆けつけると、ボンネットが半分に圧しつぶされ、白煙が上がり、エアバッグがひらいて若い女性一人と犬一匹が茫然としている。横転はしなかったもののセダンは真横を向き、前の両輪がパンクし、フロントガラスが割れていた。運転席のドアが歪んでおり、外側から無理矢理にあけて外へ出てもらい、怪我の有無を確かめてから警察に通報した。現場の後方にバイクを置き、ウィンカーを光らせた。
俺の上着を羽織らせ、温かい飲みものを渡し、発炎筒を焚いて交通誘導にあたった。ふと気がつくと聴診器を首に提げた男が立っていて、彼はすぐそばの動物病院に勤務する医者だといい、手術を終えたばかりのところに事故の音を聴いたのだという。運転していた女の人に目立った怪我は見当たらず、犬は少しばかり血を流していた。事故発生から十分後に警察官が自転車で現れ、つづけて消防車二台と救急車が到着した。めくれあがった舗装と、分断されたガードレール、車の部品などで歩道が埋めつくされたにもかかわらず、単独事故で済んだことは奇蹟的だった。午前の事故と同様に、簡単な聴取を受け、事故発生から四十分後に解放された。
日常と非日常、という言葉の意味が解らなくなる。一日のあいだに二度も交通事故に遭遇し、救助にあたった。信じたくはないが携帯の発信履歴には間違いなく百十番が残っている。明け方まで体の震えは止まらずに上の文章を書いた。一眠りして朝になった今、驚くほど落ち着いている。これはどこかで経験したことのある感覚だと思い、想起したのは、夏の長期旅行のことで、初めは非日常を楽しんでいたはずが旅を何週間も続けるうちに日常となり、日常と非日常は簡単に入れ替わるものだと気付いた。少なくとも自分の頭は睡眠によっていとも容易にリセットされる。何が起こっても翌朝には日常の一部になる。
そもそも俺が調布をバイクで走っていたのは都心で友人らと会っていたためで、とある説明会に参加し、プロジェクトの内容を理解して、これから関わっていこうと決めた、その帰り途のことだった。二十二歳にもなって今さら演劇に出るなど考えもしなかったが、表現したいことはあっても伝えることが下手なために仕方なく文章という形で代用している面はあり、声と表情とで伝えられるならそれに越したことはなく、何でもいい、他人と関わり、声を出そうと思った。これもまた引き籠りがちだった自分にとっては非日常的だが、すぐに慣れるだろう。
但し、今日や明日に再び事故に遭遇するようなことがあれば、それを日常として受け容れる覚悟は無い。神社に行って御祓いを受けるだろう。そういえば自分は今年の夏で二十三になり、前厄にあたるらしい。今降っている雨がやんだら神社に賽銭でも投げてこようかと思う。
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20070111
豚バラの塊りを塩漬けにして約三週間が経つ。正確な日付を憶えてはいないが、来週半ばには塩抜きをしてもいいだろう。一ヶ月間の風乾の後、二月中旬には乾し肉が出来上がる。豚もまさか自分がここまでからっからに乾されるとは考えもしなかったろう。半年間は保つように、立派に乾してみせよう。
先週末、実家に帰って一番驚いたことは、中学生の妹二人の一人称が「俺」になっていたことだった。さらりと言うものだから最初は気付かなかった。おそらくは一過性のものであろうしたとえ定着するとしても「僕」よりは幾分よいのではないかと思ったが、両親はかなりいやがっている。一番下の小学生の妹は「私」といっていた。四歳の甥っ子は「俺」といい、三歳の甥はあまり喋らないがよく笑い、よく走り、たいへん賑やかで結構なことであるがひどく草臥れて、俺は眠ってばかりいた。なんだか主語が入り乱れてよくわからない日記になっている。月刊アフタヌーン二月号に載っていた読切、とよ田みのる『FLIP-FLAP』にも一人称「俺」少女が登場していたな。連載が楽しみだ。
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