遁世

 テレビは無くともネットは猛然と活用しており最近はyahooオォクションが特に役立っている。無音振冷蔵庫という病室で使われる小さなやつを手に入れた。その中身はといえば鶏卵、バター、塩漬けにした鶏胸肉くらいであり、菜食が続くときには電源を切る日も多い。幾つかの貧乏レシピもネットから仕入れた。薄力粉と塩、水、サラダ油を捏ね合わせて焼けばチャパティのようなものが出来上がる。その際に使うものは鉄のフライパンが好ましい。手入れをせずに放っておけば一晩で真っ赤に錆びるが適切に扱えば鉄分補給になる、と、まあ、そんな感じで生きている。

 諸事情があって仕送りを貰わずにいるのだが足りないものは何一つ無く、次は乾し肉を自作できはしないかと企図することが娯しみとなっていて、これはどうしたことかと思う。実際に今、欲しいと思う物が何も無いのだからどうかしており、浅川に架かる橋から陣馬高原のほうを見遣ってただ登山したいなと思う程度でしかない。映画や音楽さえも必要となくなってこれはつまり平穏と呼ぶべきかも判らないのだが、終いにはすべてに充足して写真や文章に吐き出すことさえ無くなりそうな危機感はある。なんてことを考え出すから俺は結局しんどいほうに自分を追い詰めることになるのだが、それでも徐々に堪えるべき事柄は減っている。東京都心から距離を置くことについて逃避したと考えることも少なからず有るのだが、取り敢えずそれは曖昧にしておきたい。

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日記

 「忍たま楽太郎」という駄洒落をGoogle検索にかけて何も引っ掛らない為、俺が考案したものと看做します。

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日記

 茹でたそらまめ、塩、味噌、麹、唐辛子をつかって豆板醤をつくりはじめた。ほんとうは粉末唐辛子を使うのだがケチなので鷹の爪をちまちまと庖丁で刻み、その細粒が舞い上がって鼻孔へ飛込み、激痛が治まるまで濡れ布巾で二十分ほど冷やした。催涙ガスに唐辛子成分が使われるのも今はよく解る。これからじっくりと寝かせて出来上りは四月下旬。

 日本放送協会の人が訪ねてきたので受信料を払うつもりでいたら断られた。俺はNHKラジオ第一の『ラジオ深夜便』をよく聴いているのだが、現在はテレビのみが契約対象となるそうで、有り難うございますといって帰ってしまい、しかたないから受信料だと思ってそらまめを買った。豆板醤なんて既製の瓶詰を買ったほうがずっと安いのだ。

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当り前に黄昏て

 春の風物詩である火球を見た。光り始めは月より明るく、北西から南東へ十数秒かけて空を横切り、長い尾を引いて火の粉が散るのさえ判るほどで、消滅するまでぼんやり口をあけて見とれていた。午前中に近所のスーパーで鶏胸肉二キログラムを五百八十円で買えて満足していたので特に願いたいこともなく、とりあえず飛行機事故でなければいいやと思った。

 都心から一週間遅れて桜がちらほら咲き始めたが朝晩は冷え込み、寒さで朦朧となるので昼頃にようやく目が醒めてくる。冬の間に何もしていないのでそろそろ何か始めないとまずいなあと思うけれど、目が完全に醒めるのはたいてい夕方五時なのでやはり何もできない。もうすこし待って日が長くなり暖かくなった頃に蒲団を干そうと思う。

 SonotaCo.JP 長経路流星 2006/3/29 20:24:26

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