夜行記 - 14

「下水道 いつか私に 戻る水」
 という標語を、豊見城の国道沿いに見た。循環する水を大切にしようと言いたいのだろう。

「下水道 いつか私が 通る道」
 自分でも考えてみたが、とても、いやだ。

 ゼミの人々は飛行機で東京へ帰った。彼らの水遊びに付き合ったけれど、内輪で遊ぶだけなら沖縄まで来る必要もなく、遊び場は関東に幾らでもある。つまらないから途中で抜けて本を読んでいた。沖縄くんだりまで来て読書かいとも思った。

 本島南部を一人で巡った。摩文仁の丘には都道府県ごとの慰霊塔が建てられている。埼玉の塔に献花して手を合わせた。隣接する平和祈念公園には沖縄戦の戦没者氏名の刻まれた石碑があり、そこに錦三さんの名を確認した。僕の祖父の兄にあたる。ここに眠ってはいないが、しかしここではよく眠れそうだ。赤蜻蛉が海風を受けて空中に静止していた。羽音すら聴こえない。

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