夜行記 – 8この記事を はてなブックマーク に追加この記事を はてなブックマーク に追加

 宮崎県南郷町から都井岬まで、海沿いの起伏が激しい道を進む。海抜二百五十五メートルの断崖に立つ燈台からは海と空が半々の広さだった。どこから来たんですかとアベックに声をかけられて少し話した。燈台周辺を一通り見てまわって帰りかけたとき、再び先程の女の子に声をかけられ、小さな木製らしき鈴をちりんと鳴らして手渡される。

 「今、そこのお店で買いました。宮崎名物の、柿の」
 「種ですか」
 「じゃあね、がんばってね」

 一人に戻り、呻きながら時速六十キロで急坂を下った。生温い風に髪が逆立つとそこから愉悦が湧き上がっては後方に零れていき、腑抜けのようになると思われた(文学的表現)。頭に焼きついた声を振り切るべく炎天下を西へ向かい、宮崎県串間市から、県境を越えて鹿児島県の志布志、大崎、鹿屋で日が暮れても止まらずに、垂水から桜島に入ると真暗闇になった。

 道端の看板には、桜島が爆発したときは通行止になります、とある。火山弾に備えた避難壕が本当にあるものだから恐い。今回の旅行ではおそらく最後の夜間走行になると思い、前照灯を時々は消して走った。天の川が見える。フェリー乗場の周辺に国民宿舎、温泉、道の駅がかたまっており、そこで走るのを止めた。鹿児島県桜島町に二十時二十八分到着、朝から百四十六キロ走行。弁当を食べ、温泉に浸かり、深い眠りにおちて朝を迎えるとようやく落着いた。鈴は貴重品袋に入っている。手触りが心地よい。時間が経つと少々におうかもしれないと女の子は言っていた。

 現在は鹿児島市内のネットカフェにいる。何かしっかりした食事を摂り、コインランドリーも探して、十八時には本部港行きフェリーに乗る。本土からの更新はこれで終わり。

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