汚れちまつた悲しみに今日も風さへ吹きすぎる

 三ヶ月前につくったドブロクを完全に忘れていた。一合くらいは飲んだけれど酷く悪酔いしたので諦めたのだった。炭酸入りで濁っていて味は甘酸っぱい。ペットボトルに詰めた後、暖かい部屋の机のなかに収納して放置されていた。さてどうしてくれようか。呑めるはずはなく売ることもできない。下手に屋外へ持ち出して職務質問されたら困る。テロにでも使えそうな液体と化している。こんなの↓

宿酔

 逆さにすれば「ビール」と「泡」、と言い逃れもできそうなかんじではある。実際は逆さにすると白のもやもやが妖しく舞い始めて容器内の圧力が高まり、破裂に至ることが予測されなくもないというか、それはいやだ。液体は無色だったはずなのに何故、黄色なんだろうか。今日で二十一歳、もういやだ(ドブロクが)

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日記

 前期授業終わった。ホームセンターで塗料と刷毛を買い、公園で自転車を逆さにして色を塗った。光沢のある青。暇なので木陰のベンチに寝転がり、子供らの声と、イヤホンから音楽を聴きながら眠っていた。手のひらにはペンキがこびりついて足元はサンダル履き、ほとんど浮浪者のような態で転がっている男の周りで子供たちが平然と遊んでいたのは、辛うじて僕の顔がまだ若く見えたからなんだろうけど、二十年後くらいに同じ青い自転車に跨り、きこきこ漕いで向かう先は相模原の職業安定所で、道半ばで疲れきって木陰で眠り始めてそのまま衰え死んでしまう、そんな将来が透けて見えるような気もした。公園は新興住宅地の一角にあり、少なくともそれらの家の一つに自分が入居することは無いな、と考えていて本当に眠ってしまい、一時間後に目をさますと塗料はすっかり乾いていた。製造から十年とは思いがたい新品のような出来になった。

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夏なのに

 春なのに、ジャワカレーですか。なんて駄洒落を思いついたけれど中島みゆきファンじゃないと理解できないと思った。かくいう自分は四歳の頃に自転車のうしろで「シュプレヒコールの波、通り過ぎていく」と唄うような子供だった。当時の家にあった留守番電話はカセットテープを使用する大型のもので、それをプレーヤ代わりに『世情』を繰り返し聴いていた。ちなみに元になった歌詞は、春なのに、お別れですか。

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鮮やかなさよなら

 台風が過ぎ去ったら出かけようと思う。最近は震度五の揺れが来たり、祖父は脳梗塞で半身麻痺になったり、富士の樹海へ遊びに行ったり、不要な書籍類をまとめて古本屋に送ったのだが、総重量七十九キログラムになったりした。部屋が広い。持っていく本はサマセット=モームの短編集など数冊。

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